Archive for 2019年12月1日

創造的な仕事

12月 1, 2019

「ものを創造する人間は基本的にエゴイスティックにならざるを得ない、というとけっこう傲慢な物言いになってしまうが、それは好むと好まざるとにかかわらず、紛れもない事実である。

いつもまわりを見回して、波風を立てないように、他人の神経を逆なでしないように、常にうまい落としどころを考えながら生活を送っていたら、どのような分野であれ、その人には創造的な仕事なんてまずできないだろう。

ゼロの地平から何かを立ち上げるには、個人的な深い集中が必要とされるし、個人的な深い集中は多くの場合、他人との協調とは無縁の、あえて言うならデモーニッシュな場所で進行させられるからだ。

 

しかしだからといって、「私は芸術家なんだから」と、エゴを手放しで前面に押し出していったら、まともな社会生活を送ることは難しくなるだろうし、その結果、もたらされる各種のトラブルは、創造のために不可欠な「個人的な集中」をかえって妨げることにもなるだろう。

十九世紀ならともかく、二十一世紀の今日においては自我をむき出しにすることはなかなか簡単ではない。だから創造を職業とするものは、それぞれに自分と、自分を取り巻く環境との現実的妥協点みたいなものを、どこか見出していかざるを得ないことになる。」

『小澤征爾さんと音楽について話をする -始めに 小澤征爾さんと過ごした午後のひととき -』より 小澤 征爾 (著)、村上 春樹

71sFt8LZROL.jpg